O  S  A  K  A    A  L  I  E  N    C  L  U  B


大阪エイリアンクラブ
 
file1;1998年10月〜12月

これは1998年10月から1999年4月まで朝日新聞関西版の夕刊に毎週金曜連載された記事をまとめたものです
(注/新聞社の都合で表記できなかった箇所などは元に戻してあります。)



第1回

大阪エイリアンクラブ発足


 皆さんこんにちは。大阪エイリアンクラブ、略してOAC。代表のドナインシタイン博士です。当クラブは、大阪以外にルーツを持ちながら大阪に住んだり大阪で働いたりするはめになった「異邦人」つまりエイリアンのための秘密結社。ここは、人の心にずかずか上がり込む大阪弁に辟易し、自分が歩行者信号を無視しているくせに車をにらみつけるOLに肝を冷やして生活する我々エイリアンが、日頃のうっぷんをはらし少しでも平穏な生活を送れるよう互いに情報を交換する場です。
 さて、かく言う私は長崎出身。はじめて大阪を訪れデパートで買い物した時のことは忘れられません。エスカレーターを人が歩いている!
 それも何人も。駅ならまだしも何故デパートで? 大阪のデパートには急いで買わないと命に関わるようなものが置いてあるのか? ハブの血清か?大阪には毒ヘビが?謎が謎を呼ぶ初体験でした。
 しかし歳月は人を変えます。どこで間違ったのか私は今、子供の頃から自分を「わし」と呼ぶ大阪生まれの妻と結婚し、キタに住んでいます。すっかり体が大阪になじみました。エスカレーター、歩くどころか走ります。店では欲しい物を探す前に大声で店員に聞きます。たこ焼きは晩ご飯。デパートは「百貨店」。「肉」といえば牛肉です。
 ですが安心して下さい。体は汚れても心は売り渡していません。「非大阪人」の誇りはいつだって私の中に息づいています。みなさん、どんなに辛くても決して諦めてはいけません。同志は大勢います。力を合わせて大阪で生き抜くノウハウをにつけ、幸せになりましょう。
 大阪エイリアンクラブではエイリアンの皆さんの体験談や悩みを募集します。
 朝日新聞夕刊編集部「大阪エイリアンクラブ」係まで。
  (注/1999年3月で終了しました)

[1998年10月9日]

第2回

大阪のタコ焼きはまずい


 大阪のタコ焼きはまずい。もちろんうまい店もいくつかはありますが、まずい店が多い。私の知る最もうまいタコ焼きはなんと、京都にあります。左京区に本店のある「蛸虎」という店。外側はカリカリに焼けていて歯ごたえがあり中身はトロッと柔らかい。ふつうの倍ほどの大きさなのにあっという間に一皿平らげてしまう。ところが大阪では、行列のできる有名なあの店この店さえ、粉っぽかったり油じみてたり。(「たこやきくん」はうまいですがね)一体どういうことですか!
 タコ焼きは大阪名物じゃなかったんですか!
 私はついにその謎を解明しました。大阪人はあす失業しても困らないというのは有名な話。タコ焼き屋で生活していけるからです。晩ご飯に家族でタコ焼き機を囲む大阪では、誰もが幼い頃からタコ焼きを作っては食べ、腕に自信があるのです。ですがそれは裏を返せば自己流、つまり素人の味で育ったということ。ところがよくしたもので、買いに来る客も同じく素人の味で育った大阪人。ということは素人が素人の作ったものを買って満足するという輪が出来上がってしまっている。これではうまい店ができなくて当たり前です。
 これに対して大阪以外では、タコ焼きはプロの作る物です。うまくて当たり前。そこにはちゃんと競争原理が働き、まずい店は淘汰されていくのです。大阪よりウマいタコ焼き屋さんが京都にあるのもうなづけます。関西を離れると今度はタコ焼き人口が減ることで逆に競争が減り、味は落ちるものと思われます。ただし明石焼きはまた別物。ここではソースでいただくあのタコ焼きについて考えましょう。
 もっとも大きな誤解はタコ焼きの味ではなく、「大阪名物タコ焼き」が、町中で売られているタコ焼きだと思われている点です。ちがいます。大阪名物なのは家庭でつつきあう晩ご飯のタコ焼きのことなのです。ですからエイリアンの諸君。故郷から親戚が訪ねて来たら道具屋筋へ直行し、タコ焼き機(ガスバーナー内蔵の)を買いなさい。そしてタコ焼きパーティでもてなしましょう。
 困るのが手みやげですが、まちがっても冷凍のタコ焼きなど勧めないこと。赤福を持たせなさい。伊勢名物と書いてありますが構いません、私はいつもそうしています。大阪で手に入る一番おいしい関西みやげだからです。

[1998年10月16日]

第3回

試食くいだおれ大阪


 大阪府富田林市の主婦エイリアン、荻野さんのおはがき

 私は大分に生まれ育ち、広島、三重、そして現在富田林と引っ越しを重ねた者です。こちらに来て一番びっくりしたのは「試食をガツガツ食べる」ことです。近所のジャスコのハム・ウインナコーナーは老若男女を問わず群がってようじを突き立てています。土日ともなると家族でとり囲んで夕食代わりのように食べています。私までが、最近はようじに2個連チャンで突き刺して子供に握らせたりします。この次よそに引っ越した時、いやしんぼに見られそうで、困っています。

 困りましたね。引っ越せばまだいいでしょうが、もしもこのままお子さんが大分系大阪人二世として大人になったら、間違いなく土日の夕食は家族でスーパーでしょう。もう宿命です。受け入れるあなたの心の問題ですね。
 それにしても最初はさぞかし驚かれたことでしょう。私は幸いにしてまだこんな家族の夕食に出くわしたことはありません。できればこのまま一生出会いたくないものです。
 大阪人の掟の一つに「あかんと言われるまではやっていい」があります。これは一概に悪いこととは言えません。大阪が商人の町として発展する中で獲得した「個性」だと言えます。さらに「自分に都合のいいサンプルは徹底的に活用しろ」というのもあります。スーパーで試食を断られたら「あっちの店はOKやったのに」とゴネるのです。
 つらいでしょうが、歴史には勝てません。次の引越しの時また困ればいいんです。土日と言わず毎日、デパートにも足を伸ばして、すてきな大阪試食ライフを満喫して下さい。

[1998年10月23日]

第4回

客に謝る店


 先日私は大阪・キタの自宅近くにオープンした店で晩ご飯を食べました。明け方までやっている店にしてはまずまずの値段だし、味もいいのですっかり気に入りました。ところが、ご飯だけなぜか高い。小さい茶わんにお上品な盛りで180円もするのです。おかずがおいしいだけにご飯が進みます。それを見越してのことならあまりにあこぎでしょう。いやいや、開店したばかりで値段の設定がこなれていないのだろう、これからひいきにしたい店だしここはひとつ忠告しておいてあげようと思い、勘定を払いながら「ご飯安くしないと、もう来ないよ」と、何だか脅迫めいたことを言おうとしたまさにその瞬間です。いい人っぽい、誠実さを絵にかいたような店の主人は深々と頭を下げて驚きの言葉を発しました。------「すいません」
 私は言葉を失いました。なぜ彼は人の心が読めるのだ。いや私には無意識のうちに独り言を言う癖が? などと考えているスキに彼はレジを打ち、金額を告げ、うろたえる私からまんまと代金をせしめたのです。
 大阪の商店主が買い物客に「すみません」と言うことについては以前から引っかかるものがありました。なぜ謝るのか? なんだか正当な対価より余分に払っているようで、損したような気がします。ギブ・アンド・テークなのに。
 ただ、それを補うかのように大阪にはすばらしい風習があります。買い物客の「ありがとう」です。いい買い物をした時、素直に感謝の気持ちを言葉にするのは気持ちがいいもの。お互いに「ありがとう」を言い合って店を出る。これは海外でもよく見受けられる光景です。大阪にオリンピックを受け入れる国際都市の下地があるとすれば、そんな点かもしれません。エイリアンのみなさん、この「ありがとう」だけはぜひとも見習い、応用の幅を広げて欲しいと思います。
 
[1998年10月30日]

第5回

東京のライバルか


 当クラブ発足以来、同志エイリアンの方々から数多くの励ましのお便りをいただきました。誰にも言えない苦労を重ねた方がずいぶんいらっしゃるようです。一方、大阪人の方から批判もいただきました。「大阪を悪くいいすぎ」「大阪人はそんなやつばかりじゃない」など。一言だけ言わせていただきますが、私は大阪や大阪人を非難するつもりはもちろんないし、むしろ少なからず愛しております。
 ただ好きな人の欠点もそれなりに目につくし、直せるよう気づかせてあげたいというおせっかいな気持ちはあります。たとえば大阪人が東京をライバル視する姿は、かっこわるい。京都人のそれは開き直りに近い分いさぎよくも見えます(ライバル視というより無視に近い)が、大阪はまだまだ東京には負けてないというずいぶんな勘違いあるようです。
 断っておきますが大阪の方が東京より優れている点はいくらでもあると思いますし、東京人の奢りには腹が立つ。しかし、大阪人が問題にしたがるような商売、人情、食文化、芸能、歴史などは、今となってはどれひとつ大阪の専売特許ではありません。だからといってずうずうしさやマナーの悪さ、犯罪件数などを誇るようではおしまいです。
 それでもどれかにすがって「大阪が一番」と言いたがる大阪人は多い。自分の土地を自慢するのは人情ですが、本当に一番になりたいのなら、まず自分の姿を見つめ直すことから始めなくてはなりません。大阪人は日本が「東京」「大阪」「それ以外」でできていると思っているようですが、大阪の客観的な評価は「西日本では一番大きな都市」ぐらいのものです。
 この大阪が東京と肩を並べているという思いこみの現れに「東京でも自分とこの言葉で堂々としゃべってるのは大阪人だけ」という言い方がありますが、これには大きな誤解があります。詳しくは次回。

[1998年11月6日]

第6回

大阪弁は標準語に似ている


 「東京でも自分の土地の言葉で堂々としゃべっているのは大阪人だけ」という自慢をよく耳にしますが、そこには大きな誤解があります。もちろん事実はほぼその通りでしょうが、その話に対する大阪人自身の受け止め方が間違っている気がします。
 以下は私の相方の劇作家、後藤ひろひとの体験談。彼は山形出身。インドのヒンディー語を学ぶため大阪外大に入学。以後ずっと大阪暮らしです。
 東京では東北出身者は珍しくないが、大阪ではほとんどガイジン扱いされる。困るのは、時代劇で悪代官の圧政に苦しむ農民の決まり文句「おねげえでごぜえますだ」が東北弁だと思われていること(私もそう思っていたクチですが、あれは関東の言葉らしい)と、いちいち「山形弁しゃべってみて」とリクエストされること。ほんとに閉口する。そんなときは開き直って次のような例文を教えるのだそうです。
 「んめおうどだ、んめおうどだちて、あがすけつかして、みな食てすまたら、腹くちくて、んごがんねぐなったのったなやー」。ちなみに意味は「おいしいさくらんぼだ、おいしいさくらんぼだと言って、いい気になって、全部食べてしまったら、お腹が痛くて、動けなくなっちゃったんだよー」。
 山形弁を東京で堂々としゃべらないからといって、非難する権利は誰にもありません。だってしゃべられたって困るでしょう。意味まるっきりわからないもの。つまり、大阪弁はそのまましゃべっても通じるから許されるだけ。それだけ標準語あるいは東京弁に近い言葉だということです。ボキャブラリーはかなり近い。それなのにアクセントがまるで違うから、混同されることもなく、一つの言葉としての地位を獲得している。実際東京に限らず全国で大阪弁は認知されているし、通用します。誇るとしたら、その点だと思うのですが。

[1998年11月13日]

第7回

カウンセリング・その2


 京都市にお住まいの横浜市出身エイリアン、27歳の会社員A・Hさんからのおはがき。
 転勤で泣く泣く関西に住み始めて半年。先日、日本橋の電器店街でビデオカメラを見ていたら、見知らぬおばさんにいきなり「お姉ちゃんこれが一番安いやつやろか」となれなれしく話しかけられ、思わず嫌悪の表情を浮かかべてしまいました。こんな時どうしたらいいのか教えて下さい。

 その嫌悪の表情ですが、浮かべたままでかまいません。相手はそれがあなたのふだんの顔だと思っています。そう思わせておきなさい、他人です。
 次に、あなたにビデオカメラの知識がある場合。「いやこっちの方が同じ機能で2万も安い。それにデジタルは高い。ビデオなんてどうせ2カ月も一生懸命撮ったら使わないようになる。アナログにしなさい」という意味のことをなるべくきつい大阪弁で答えましょう。
 知識がないなら近くの店員をつかまえ「これは高い。同じのが向こうの店で49,800円だった」という内容を大阪弁で伝えます。店員が「これでいかがでしょう」と値段を下げてきたらすかさず店側にたち「お母さん、これはおすすめ。このサイズで5万円切るのはうちだけ」と説得します。
 勇気はない? いいえ。あなたはすでに半年もこの地に暮らしてるじゃありませんか。一度横浜に帰ってみるとわかります。友人のあなたを見る目は違っているはずです。そしてもう一度帰省した時、あなたの友だちは増えているか減っているかのどちらかです。自信を持って下さい。一つひとつの努力があなたを立派な大阪人にします。


 [1998年11月20日]

第8回

電車の乗り方


 今日はエイリアンのための大阪の歩き方、電車編。大阪独自のルールをしっかりと身につけましょう。
 まずは切符の買い方。券売機の上の料金表を10m手前から確認しながら接近し、5m手前で財布を出します。券売機の前に来たときには必要な小銭を手に握っていること。切符とおつりが出てきたら、後ろの人がすでに小銭を入れようと身構えてますから、さっと逃げるようにホームへ向かいます。
 自動改札では、入れた切符が出てきたらすぐに取れるよう歩調を機械に合わせます。ホームへの階段では、降りる人が全面を占領してドドドと向かって来て、通してもらえないこともしばしばです。「左側通行なのに」と文句を言ってもムダ。日ごろからアメフトなどのスポーツに親しみ、敵を次々にかわしていくしかありません。
 ホームでは2列で電車を待ちますが、スキマを開けると「並んでないねんな」と割り込まれます。ぎっちり詰めて並びましょう。さあ電車が来ました。降りる人のためにドアの前を開け、1列ずつに分かれます。この時もたもたして前の人との間が少しでも開くと、またまた横から入られます。一瞬の油断で後ろの人に大迷惑をかけます。
 さあ、二手に分かれました。最大のヤマ場はここからです。もしも降りる人がまだいるうちに反対側の列が先に入り始めたらどうします? 「降りる人が済んでから!」。そう叫んで乗り始めた列を引き留める。いい方法ですが、実行は無理ですね。ならば次善の策は? そう、あなたもすかさず乗り込むのです。いやでしょうが、降りる人の迷惑よりも後ろに並んでいる人の迷惑を考えましょう。だってこれから車内で顔つきあわせるんだし。
 これでやっと乗車できました。こうなったらもう早い者勝ちです。ダッシュするなり、仲間と声をかけあいながら席を取るなり、好きにして下さい。


 [1998年11月27日]

第9回

信号の渡り方


 エイリアンのための大阪の歩き方。今日は信号の渡り方です。大阪独自のルールを知らないと大けがにつながりますのでしっかり読んでください。
 まずは車を運転している場合。車には乗らないと言う人も、安全に歩くためには車のことを知っておく必要があります。大阪人は信号を守らないとよく言われますが、そんなことはありません。少しだけ信号に対する感覚が違うだけなのです。
 みなさんは正しい信号の意味を知っていますか。「青は進め」「黄色は注意」「赤は止まれ」――そんなふうに理解していたのでは信号無視より危険です。たとえば青は「ほかの交通に注意しながら通行してもよい」。これが正しい意味。黄色は「停止線で安全に止まれない場合に限り、ほかの交通に注意しながら通行してもよい」。赤は「停止しなければならない」。
 これが大阪ではどうか。青の意味は全く同じです。「安全を確認したうえで進行してもよい」。黄色は青と全く同じ。赤はタイミングによって異なります。赤になって3秒以内だと「安全を確認したうえで進行してもよい」。4、5秒までは「安全に止まれない場合に限り、注意しながら進行してもよい」。それ以降は「しかたないから止まれ」。さらに青になる3秒前が「ブレーキから足を放せ」。青に変わる瞬間は「ダッシュかませ」です。
 わかりましたか。では歩行者の歩き方です。こちらはシンプル。「車が来てなければ渡れ」「車が来てたら渡るな」これだけですから。信号の色はあまり関係ないようです。ただ、車はいつどこから現れるかわかりません。左折・右折してくる車、Uターンやバックしてくる車――あらゆる場合を考慮した上で安全な場合だけ渡ってよい、ということなんです。たとえ、信号が青でも、ですよ。自分の身は自分で守るよう心がけてください。


 [1998年12月4日]

第10回

魔宮・梅田地下


 大阪の歩き方3は、広大な地下都市=私たちエイリアンにとって魔宮のダンジョン、梅田地下街の攻略法です。
 初級レベル。阪急梅田駅から泉の広場へ行ってみましょう。プチシャンモールを通り、そねざきけいさつコミュニティプラザ前を左折、あとは直進ですから簡単です。しかし途中にはHEPファイブ・ナビオがパックリと口をあけています。行き止まりの袋小路もあります。フコクパレッタも迷い込むとやっかいです。注意して進みましょう。
 中級レベル。こんどはそねざき署前からドーチカへ。いきなり待ち受けるのは丸い柱が立ち並ぶ広場。ここは歩行者の通行量もさることながら、その全員が勝手な場所を勝手な方向に向かって一目散に歩く、最大の難所。ここを人にぶつからずに行きたい方へ歩けたらもう中級はクリア同然です。阪神地下買い食いパラダイスでの食べ過ぎに気をつけましょう。
 広場を無事通過したら全国名産品ストリートです。ニセ出張のお父さんが家族へのアリバイに使っているというのは本当でしょうか。この先の白くてきれいな道を直進するとハービスへ行ってしまいます。きれいじゃない方へ左折しましょう。西梅田駅の先が目指すドーチカです。これで中級クリア。
 ではいよいよ上級レベル。ディアモール周辺エリアです。ここは阪神百貨店・第一生命・ヒルトンホテル・駅前第一〜第四ビルの地下部分が複雑につながっています。このエリアを自由に行き来できるようになってください。マルビル下の広場からはじめるといいでしょう。この広場から放射状に道がのびています。地上からの光が入るおしゃれな通りもあります。最後まで苦労するのは第一!第四ビルの二層ダンジョンでしょう。ここは私もまだ攻略できていません。
 最後にヒント。地下街は地上の道路の下がメインストリートです。まず地上の地理を覚えましょう。


 [1998年12月18日]

第11回

自転車の乗り方


 エイリアンのための大阪の歩き方。きょうは自転車の乗り方です。
 大阪で最も人気のある乗り物は自転車でしょう。いわゆる繁華街でこれほど自転車が多い都市は他に類を見ませんから。
 自転車に乗るとき迷うのは、歩道を走るべきか車道を走るべきか。これは文句なく歩道です。車道はあまりに危険です。大阪ではよく堂々と車道の真ん中を走っている人がいますが、命知らずですね。車を運転する方は前ばかり見てはいません。助手席の異性といちゃついたり、携帯電話で得意先にペコペコしたりしてます。気をつけてもひかれます。大阪に限ったことではありませんが、とくに大阪がこわい。
 さてそこで歩道を走るわけですが、こんどは加害者になる危険があります。人にぶつからず走らなくてはなりません。練習のために、日本一長いという天神橋筋商店街を北に向かって走ってみましょう。南森町付近が少し込んでいますが、ここをクリアすれば「天三」あたりはガラガラです。環状線の天満駅前から「天六」にかけてが最大の難所。道幅が狭くなるうえ、人通りもやたらと多い。コツはほかの自転車に追随すること。人並みをかきわけずにすむので楽です。先頭になってしまったら、例のあのテクニックを使いましょう。そう、ひたすらベルを鳴らしながら走るのです。おばさんみたいでかっこわるいという人は20段変速マシンを買って、車道を自動車と同じスピードで走ってください。
 さて商店街での一番の敵は、反対側から同じように自転車に乗って向かってくる人です。譲ったら負けです。しっかりと相手の目を見て、スピードはゆるめないように。「わしは譲らん」という気持ちの強い方が勝ちます。
 どうです? 無事天六に着けましたか? あっさりとゴールできたあなた、もう立派な大阪人です。


 [1998年12月18日]



つづきをみる